第1回 キネ・エクザクタの誕生
東ドイツのキネ・エクザクタは世界初と言っていい35ミリ一眼レフだ。ソ連でスポルトという35ミリ一眼レフがそれより先に作られたと言われているが、ほとんど知られずに終わった。キネ・エキザクタはドレスデンのイハゲー・カメラヴェルク・シュテーンベルゲン社がそれまでのエクザクタ(4×6.5センチ判)を35ミリ判にしたものだが、全くの新規設計である。いまの一眼レフにつながるこのカメラの系譜をたどってみよう。じつは、この変わったスタイルのカメラに興味があり、数台のコレクションもある。
キネ・エクザクタは1936年のライプチッヒの新年見本市でデビューした。しかし、「エクザクタ・カメラ 1933−1978」(英文のみ、翻訳なし)によれば、1935年の同社のカタログに試作モデルが載っているという。しかし、カタログに載ったモデルはそのままの形では発売されず、36年の市販第1号機は丸型のマグニファイアーを持つファインダーが大きな特徴だ。同書によれば、1型と呼ばれ、製造番号で言うと、455600から486000だという(ただし、484000からは次のモデルとだぶっている)。しかし、「東ドイツカメラの全貌」(朝日ソノラマ社刊行)によると、約1,400台しか作られなかったことになる。この2冊の文献がキネ・エクザクタに関していちばん詳しく、大いに参考になった。
いずれにしても、36年に登場したキネ・エクザクタは円型マグニファイアーを持つウエストレベルファインダー式で、上からのぞき込んで撮影するものだった。レンズマウントはバヨネット式のいわゆるエクザクタマウントで、レンズ交換が可能だった。交換レンズは最終的には広角から超望遠までラインアップされる。シャッターは布幕フォーカルプレンシャッターで、B、Z(ドイツ語のZeit、英語のtime)、1/25〜1/1000秒の通常のシャッター速度のほかに、12秒から1/10秒までの長時間露出が付いていた。シャッターボタンは前面にあり、左手で操作するようになっていた。そればかりではなく、巻き上げレバーも左手操作だったのだ。設計者が左ききだったのだろうか。そして、なによりも、上部から見た八角形のユニークなスタイルが特徴的だった。これは中判のエクザクタから受け継いだスタイリングだが、なんとも言えない形をしている。このほか、撮影ずみのフィルムを切るカッターを内蔵していた。
そして、翌年には改良型の2型が出ている。大きなちがいは、ファインダーのマグニファイアー(ルーペ)が丸型から長方形になったという点だ。これにより、倍率は1型と同じ4倍だが、より広い視野が見えるようになった。この型は「東ドイツカメラの全貌」によると、いろいろなバリエーションがあったようだ。しかし、「エクザクタ・カメラ」ではいっしょに扱っている。このうちの2台を持っているが、残念ながら動かない。インターネットで、オンラインショッピングしたものである。購入時は動いていたのだが、すぐに動かなくなった。じつはこの動かなくなるのが、このカメラの最大の欠点で、このため完動品は少ない。そういうわけで、今回は撮影をしないで、カメラの姿写真だけお見せする。

第2回 エクザクタの発展と完成
キネ・エクザクタは2型になってから、アメリカ市場向けにExaktaではなく、ExactaとKをCに変えた機種も出している。これは第二次世界大戦後作られた初めてのエクザクタだった。
そして、1950年には大幅な改良を加えたエクザクタが登場した。エクザクタ・ヴァレックスである。このカメラの最大の特徴はファインダーが交換できることだった。それまでのキネエクザクタはウエストレベルファインダー固定式だった。しかし、新しいヴァレックスはアイレベルファインダー、つまりペンタプリズムファインダーとの交換が可能になったのだ。このペンタプリズムファインダーはスクリーン(焦点板)と一体化されたものだった。同じ年にエクザクタVも登場している。これはヴァレックスという商標名がすでにアメリカで登録されているため、使えなかったからだ。内容的にはヴァレックスと同じである。
さらに、1951年にはエクザクタVXが出現した。VXのXはシンクロのX接点、つまりストロボに同調できることを示している。また、ペンタプリズムファインダーが標準装備となった。また、タイム露出はドイツ語の頭文字Zから、英語のTになっている。このVXはアメリカ市場向けで、ヨーロッパ市場にはエクザクタ・ヴァレックスVXとして同じ年に発売されている。このVXシリーズには1953年から、スクリーンにスプリットイメージ距離計が追加された。それまではマット面だけだったのである。また、VXシリーズにはアメリカ市場向けにASA表示、ヨーロッパ市場向けにDIN表示と2種類のタイプがあった。
1957年にはエクザクタ・ヴァレックスIIaが登場してきた。いきなりIIaというネーミングになった理由はわからない。いずれにしても、スローシャッターが大幅に改良された。スロー秒時は1/5、1/2、1、2、3、4、5、6、8、10秒。なお、アメリカ市場ではエクザクタVXIIaという名前になっている。このヴァレックスIIaは大きな成功を収めた。日本の写真家もエクザクタ・ヴァレックスを愛用するようになったが、それはこのIIaからが多い。そして、1961年にヴァレックスIIaのペンタプリズムのデザインが大きく変更される。いままでは頂部がとがっていたが、それが平らになった。同時にエクザクタのロゴも変更され、ふつうの文字になっている。なお、ヴァレックスIIaには「ソ連占領下のドイツ製」という刻印のあるモデルもある。これはコレクターには垂涎の機種だろうと思われる。
1963年にはエクザクタ・ヴァレックスIIbが登場する。デザインはさらに洗練されたものとなったが、重要な改良は高速シャッターが倍数系列となったことだ。つまり、1/30、1/60、1/125、1/250、1/500、1/1000秒となったのだ。ここで、エクザクタはほぼ完成したと言っていいだろう。
1966年のフォトキナで発表され、67年に発売されたエクザクタVX1000はシャッターダイアルなど、さらに洗練されたデザインとなったが、大筋はヴァレックスIIbと変わらない。なお、67年にはエルバフレックスVX1000という別名機種も登場している。さらに、1969年にはシャッター最高速を1/500秒に抑えた普及タイプのエクザクタVX500も出た。
この後はペンタコン人民公社からプラクチカVLCの名前をエクザクタRTL1000と変えた機種や、西ドイツのメーカーからエクザクタレアルなどが登場している。さらに、1970年以降、エクザクタツインTLからはコシナが作るようになった。つまり、イハゲー社のエクザクタはVX500で終わりとなったのだ。
上記のうち、エクザクタVXとヴァレックスIIaを持っているが、現在では撮影できるのはVXのみである。IIaも何本かフィルムを通したら、巻き上げ機構が壊れてしまった。作例はVX、カールツアイスイエナ・テッサー50ミリF2.8で撮影したものだ。絞ると非常にシャープである。ただし、シャドー部はつぶれ気味だ。


エクザクタVXで撮影。カールツアイスイエナ・テッサー50ミリF2.8、絞りF11、1/100秒、フジクロームプロビア100F。